終戦の日に

人間、上り坂の時には、押せ押せムードで成功を重ね発展していくことも、さほど難しいものではない。成長の日々は、本人も楽しく周囲も活気づいている。組織の内部は引き締まり、人材も自ずから参集する。夢は限りなく広がり世に不可能はないようにさえ思えるものだ。

 

だが、ひと度躓くと全てが逆になる。

外的な困難と心理的な苛立ちが重なり、組織の内部には相互非難と猜疑が生じ、離反と裏切りが続出するのも珍しくない。より良き明日の展望もなく、現状よりも悪化を防ぐためにあくせくする日々は、その現状がどんなにきらびやかでも耐え難く苦しいものだ。

 

人間誰しも落ち目にはなりたくない。しかし、長い人生において、また組織として、一本調子の上昇ばかりが続くことなど滅多にない。殊に、偉大な目標に向かって急進する野心的な人生や積極的な組織の場合には、躓き転ぶと打撃は大きい。それだけにこの苦難に満ちた後退の時期をいかに切り抜けられるか、その巧妙さと頑強さこそ、人間や組織の価値を決定する。

 

日本の歴史でも、偉大な成功者、なかんずく天下を制したような英傑はみな、好調期の攻めの鋭さとともに、苦難の時期の守りの固さを持っている。

源頼朝は伊豆山中で敗戦に耐えて気力と味方の結束を保ったし、足利尊氏は敗走のあとで九州から再起した。徳川家康も三方ヶ原の大敗に耐え豊臣秀吉との外交戦での屈辱を乗り越え、石川教正の出奔後の動揺を抑えて、覇気と組織を維持し続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

堺屋太一の『豊臣秀長 ある補佐役の生涯』の一節だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

きっと、ぼくの目標は、ぼくの大きさを考えると、とてつもなく大きい。

 

 

 

 

 

 

だから、これはぼくにも、必ずあてはまるはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

堪(た)えろ。

 

 

耐えろ。

 

 

 

 

堪(こら)えろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

喜びと悲しみはいつも織り交ざっていく

 

太陽の下で、花に囲まれて

あなたと日々過ごしたい

この想いを胸に

新しい世界で私らしく生きる

 

セシル・コルベル 「アリエッティのうた」